米国の金融政策を決める会合(FOMC)の前日、株式市場は静かに上がっていく ── 「発表前ドリフト」と呼ばれ、海外の論文で実証された現象です。では為替でも同じことが起きるのか。ユーロドルの16年・127回のFOMCで確かめました。
検証の条件
ユーロドル(ドル指数・ドル円も補助) / 2010-2025・予定FOMC 127回 / 発表前24時間の値動き / 非FOMCの同時間帯と対照 / 期間別の減衰・窓幅の感度・外れ値耐性・多通貨・局面別 / コスト込み・夏時間補正・先読みゼロユーロドルは、FOMC発表前24時間で平均 +0.084% 上昇していました(127回・統計的に有意)。ユーロドルが上がる=ドルが緩む(売られる)。株のリスクオンが、為替では「発表前のドル安」として現れます。
大事なのは対照を取ったことです。FOMCではない普通の日の同じ時間帯を測るとほぼゼロ。FOMC前だけ、はっきり違う。「たまたまその時間帯が上がりやすいだけ」ではありませんでした。
窓が恣意的では? 6〜48時間で振っても消えません(12時間 +0.078%/t2.67、24時間 +0.084%/t2.63)。24時間だけ都合よく効くわけではない。
数回の巨大FOMCが作っただけでは? 中央値も+0.055%とプラス。上位3件を除いても+0.061%。「典型的なFOMC」でも上げています。
ユーロドル1本の話では? 対ポンドでも同方向。ただし正直に言えばドル円と豪ドルは弱い。効きが濃いのは対ユーロ・対ポンド側です。
金利サイクルで分けると、景色が変わります。
| 局面(粗い代理区分) | 回数 | 発表前24h平均 | t値 | 勝率 |
|---|---|---|---|---|
| 利上げ局面 | 37 | +0.121% | +2.17 | 68% |
| 据置・ゼロ金利 | 68 | +0.083% | +1.78 | 59% |
| 緊急/危機(2020) | 7 | +0.233% | +2.04 | 71% |
| 利下げ局面 | 15 | −0.069% | −0.98 | 40% |
「FOMC前は常にドル安」ではありませんでした。効きが濃いのは利上げ局面(+0.121%・勝率68%)で、利下げ局面ではむしろ反転します。向きを固定して機械的に張ると、局面が変わった瞬間に逆回転します。
ただし利下げ局面はn=15と小さく、区分も粗い代理です。断定はできません。「局面で符号が変わりうる」という警告として読んでください。
株の発表前ドリフトが論文で有名になった後に薄れたのと同じく、為替でも2015年をピークに減衰しています。直近(2023年〜)は t値1.4前後と統計的に弱い。近年"薄れた"ように見える一因は、相場が利上げ局面から利下げ・据置へ移ったことかもしれません。
発表24時間前に買い、直前に売る。往復コストを引いた後の期待値は全期間で+7.2pips/回(勝率60%)。多くのアノマリーが「コストを払うとマイナス」で消える中、これはかろうじて黒です。
それでも太く張れない理由が重なります。(1) チャンスは年8回だけで複利が効かない。(2) 弱点はスプレッドではなく保有ノイズ ── +7pipsの薄いエッジのために24時間持つと、その間の普通の揺れ(1日±50pips規模)に晒される。当たりは薄く、外れの分散は大きい。(3) 局面依存。(4) 近年は弱い。
「本物の痕跡」ではあっても、「太く張れる優位」ではありません。
FOMC前にドルは緩む ── 「半分本物・近年減衰」という一番リアルな答え(note・無料)
FOMC前24時間のドル安は本物(+0.084%・対照はゼロ)。ただし利上げ局面に偏り、利下げ局面では反転、2015年以降は減衰。コスト後+7.2pips/回でギリギリ黒だが、年8回・24時間保有のノイズ・局面依存で太くは張れない。効くか効かないかではなく、「どの条件で、どれだけ」。
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